【書評】みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」

書評

🤓はじめに

発売前からやばい本との噂だった、『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』を読みました。

みずほ銀行のシステム統合を描いた衝撃の一冊、発売前からベストセラー1位を独走中【やじうまWatch】
 システム開発の舞台裏を描いたとある本が、Amazon.co.jpの売れ筋ランキング1位を先週末から独占している。
『ヤバい本が出ようとしている』みずほ銀行のシステム統合の歴史を綴った本が出版される模様「最恐のホラー小説」「章題を見るだけで闇を感じる」
これはぜひとも読みたい…!

が、正直ちょっと期待はずれだったかなぁ、、、題材が良かったのにもったいない、、、

🐼読んだきっかけ・理由は?

去年、連休の度にみずほ銀行のATMがシステムメンテナンスのために止まっていたのを覚えていますか?

みずほ銀行システム統合のリリース作業が、去年の何回も行われていたシステムメンテです。

みずほ銀行システム統合は、IT業界のサクラダファミリアとしてIT業界内では注目されていて、良く話題になっていました。

私は「人類には不可能」だと思っていたのですが、やりきった関係者の方々はまじリスペクトです。

というわけで、いったい中で何が起きていたのか知れるかな〜と思って読んでみました。

👆この本の概要

このプロジェクトに「四千億円台半ば」を投じたとする。銀行業界のシステム開発プロジェクトとして前代未聞の金額であり、総事業費が約六百五十億円だった東京スカイツリーに換算すると七本も建てられる計算になる。

本文より

という、人類史上やばいプロジェクトを通じて

システム開発プロジェクトに何度も失敗し、二度の大規模システム障害を引き起こしたみずほFGが、どのようにして社内を立て直して、巨大システム開発プロジェクトを成功に導くまでに「成長」したのか。

本文より

を説明してくれるノンフィクションです。

全体としては三部構成になっていて

  1. ↑のスカイツリー7本分プロジェクトの話
  2. ↑の前にあった2011/3の大規模障害の話
  3. ↑の前にあった2002/4の大規模障害の話

なので、目玉のスカイツリー7本文の話は半分くらいです。正直水増ししてる感があります。

🤓作者さん

業界紙を発行している「日経コンピューター」です。

日経コンピュータ 公式サイト
日経コンピュータはシステム管理者・情シス担当者などのITプロフェッショナルからITで企業改革を進める経営者まで有益な情報をタイムリーに提供します。2020年6月25日号は特集「アフターコロナに踏み出せ」

ずっと取材とか連載してたのをまとめたって事ですね。

⏳所要時間

1hくらい。

🙆‍♂️どんな悩みを持つ人にオススメ?

悩みを解決する本ではないのですが、

  • IT業界に興味がある
  • 連休の度に止まっていたATMに文句がある
  • システム開発の何が大変なのかよくわからない
  • 知り合いがこのプロジェクトに関わっていた
  • 社内でIT担当になったけど色々よくわからない

という方は一読しても良いと思います。

🤔読むと得られること

  • 企業におけるシステムの重要性
  • システムの改修を後回しにするとどんな事が起きるか
  • 「銀行の手続きってやたら面倒だし口座作った店舗に行かないといけなかったり15時には閉まったりなんなのどうにかならないの!」-> 「銀行って大変なんだなぁ、、」
  • IT業界の闇

基本、反面教師の本です。

📖同じジャンルの本との比較

この本読んでるとお腹がいたくなってくるので、少しでも前向きなのを読むと良いと思います。

😺本から学んだこと・ココロに残った言葉

前提となる旧システム、体制がつらい

  • 夜間処理が3万件のジョブ
    • にも関わらずワントランザクション
  • エラー処理で元データが破損するのでリトライできないバグ
  • なぜか負荷テストを実施してない
  • 超大規模システムにも関わらずデータフロー図が存在しない
  • 派閥争い

溢れ出る厨ニ的な命名とサブタイトル

  • 天眼システム
  • 十五年を経て復活したミドルウェア
  • 益荒男

これ、現場地獄じゃない??

前提として、IT業界(SI系の)はピラミット構造で発注が行われるのですが、この本では発注元となるみずほ銀行、プロジェクトの中心で行われた施策が中心にかかれていて、末端の開発会社、現場での事はあまり書かれていません。

が、やばさを想像できる記述が2つあります。(※あくまで推測です。)

予算やばくね?

目玉の「35万人月、4000億円台半ば」という予算から、1人月(1人あたり1ヶ月に対して)100万円ちょっと、という数字が見えます。

これは、発注元から見た数字です。

実際にはピラミット構造で下請けにどんどん流していくので、末端の開発会社には途中の会社から抜かれた金額しかもらえません。

SIerとは?5つの分類の特徴と分類・SESの違いで生じるキャリアの違いも徹底解説
「SIerの読み方ってなに?」筆者が初めてみたとき、非常に難しい単語に感じたのを覚えています。SIerは「エスアイアー」と読みます。SIerの意味はシステム開発を請け負い、開発したシステムを納品する会

という事は、千社にも及ぶという開発会社のうち、末端に近い会社での単価は相場と比較してもかなり低いのではないでしょうか。

これを裏付ける数字として、他の類似プロジェクトの規模と予算が提示されています。

規模投資額単純に投資額/規模 で出した1人月の単価
三菱UFJ銀行14万人月3300億円253万円
三井住友2万人月1000億円500万円

実際にはハードウェアの予算もあるので単純比較はできないですが、みずほ銀行のプロジェクトでは、規模に対して予算が圧倒的に少ない、という事がわかります。

自動生成コードの修正が禁止

コードを自動生成する「超高速開発ツール」を全面的に採用した。生のコードを書かせなくする事で属人性を排除した。

ツールが生成したコードを手動で調整するのは禁止した。

「手で書いた方が速いし、シンプルなプログラムができる」という不満が出たが、「ツールを使えば属人性を取り除けるため、保守性が高まる」と判断し、その方針を貫いた

という記述があります。

今回のシステムはエラーが許されず、確実に作り切る事が要求されるシステムのため、この方針について一定の理解はできます。

が、ここから浮かび上がる現場の姿は、

「安い単価で、仕様書に従ってツールを使ってひたすらコードを自動生成していく作業をする大量の人員」という、地獄絵図です。

これ、人間がする事なんですかね??

あくまで限られた情報から推測した内容なので、実際は違うのかもしれませんが、こういった現場観点での記述がほとんど無いのが書籍としては残念です。

まとめ

みずほ銀行的、日経コンピューター的には、このプロジェクトはスケジュールの遅延はあったものの、無事成功し、これから攻めの体制を作れる基盤が整った!という位置づけのようです。

どうなんでしょう、私は読んでいてすごく不安になりました。

なんにせよ、前代未聞の規模のプロジェクトを、大きなトラブルも無く完遂できた、というのはすごいと思います。関わった方々、お疲れさまでした。

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